ブレインはロジック
身体は双六
むかし熱心に稽古していた男子が突然猟師になった。
理工系のトップと言われる国立大学で勉強していた彼は、「動法」と出会い嬉々として稽古していた。
ある日、インターネットで双六のように見つけた東北北端の漁船に乗った。
特にそこに知り合いがいたわけではない。
太平洋の波は厳しい。
その頃の彼は二十代前半。
なにが彼をそうさせたのかは、若かった自分を顧みるとなんとなくわかる気がする。
それから数年、思い出したように彼は電話をくれる。駒込稽古場にも何度か操法に来てくれた。
「漁船に乗って、方程式から解放された爽快感」
「地元の子供達に数学を教えると、この人、数学わかる人なの?と疑心暗鬼になっている。そんな姿に変身できた爽快感」
人懐っこい笑顔でそんな話を聞かせてくれる。そして、いつも持ち歩いているのか、ヨレヨレになった全生(整体協会の会報)を鞄から持ち出し、いろいろと質問してくる。
ガリガリ頭のロジックワールドから身体に回帰した彼は双六人生。
そろそろサイコロを振りたいみたいでいろいろ相談してくる。
一応、君の二倍以上は生きているからね(笑)
茶道具のなかに金平糖を入れる「振り出し」という茶器がある。
茶箱を持ち出し屋外で茶を一服する時の甘味として使う。
どれだけ金平糖が出るかは振り方次第。
人生は一度きり。
そんなふうに言ってみたくなる君との会話は楽しいよ。
果たして人生を旅しているものはブレインなのか、それとも身体なのか。。。
2024/3/2 Sosuke.Imaeda