また暑い夏がやって来る。
何回目の夏だろう。
毎年暑さは厳しくなるが、朝の鳥の声を聞くのはうれしい。
この時期の稽古は、呼吸法から始める。
もちろん、みなさんが体育の授業で習ったような呼吸ではない。身体教育研究所独自のものだ。そして、それは前近代の人が身体中に新しい息を巡らし、古くなった気を外気と入れ替えていた法に習っていると思う。
思い起こせば、私は三十代中頃から、残りの人生を考えるようになった。
それまでは、プラス思考で、生命に限りがあることに特に目を向けなかった。
そして私は、身体教育研究所で学び、稽古をし、かつての私達の先人が、与えられた身体を100%使い切っていくことに人生を置いていることを知った。
たとえ、使い切れなくとも、100に達成ないマイナスに目を向けることで、人生は豊かになるのだと。そうやって、毎日を過ごして行った人々。
駒込稽古場では、マイナスを減らす稽古はしない。マイナスを会得して、プラスを際立たせる、そんな稽古だ。
人には人の事情があり、人生がある。
それを思い通りにしようとしたら、それはプラス着目の人生。
人生を受け入れ、潮目が変わるたびに変化を楽しむ。それはマイナス着目の人生。
そしてマイナスはマイナスに共鳴して、同調や同化という現象を生む。稽古はマイナスを感じない人とは成り立たない。
稽古場で、新鮮な空気を身体に行き渡らせて瞑目していると、身体の中で、何かが沈んでいくのがわかる。
相方がいれば、相方もそれを同時に感じている。
垂直に身を委ねる気持ちの良さ。
自覚を失する時、マイナスが同調して新しい活気が生まれいる。
一人で瞑目するより、他者がいる方が、より集注した身体を感覚できる。
冬がやって来るのは、まだまだ先だが、確実に人生は過ぎていく。
人生にはいい時も悪い時もある。
今苦しい方も必ず潮目は変わります。
この夏のあなたとの出会いが楽しみです。
2024/7/2 Sosuke Imaeda